屋号というのは、ひとことでいえば店の名前。
法人でいえば会社名です。
世の中の会社、トヨタ、ソニー、楽天、マツモトキヨシ、モノタロウ、未来工業・・・
これらの名称が屋号にあたります。
ようするに自分がやっている事業体につけられた名前のこと。
人それぞれ自分の名前を持っているように、自営業でも会社でもその存在を示すために屋号という名前を持っているんです。
今回はこの屋号について詳しく解説していきます。
新規就農するときには必ずつけるべきものですし、簡単に変更しにくいものですので、最初にじっくりと考えてもらって悔いのないような屋号をつけていただればと思います。
屋号をつけるときのポイントをおさえる
屋号のつけかたについては、以前に記事を書いたことがありますので
そちらをまずは参照してください。
簡潔に説明しておくと、屋号を付けるにあたっては下記の3つの点に注意するといい、という話になっています。
1.わかりやすい、読みやすい
インパクトがある、おしゃれ。
そういった理由で屋号をつけたい気持ちもわからなくはないが、まず一番に考えなければならないのは
屋号でお客様に何を伝えられるか
です。
思わず噛んでしまうような言いにくい屋号をつけたり、どう読んでいいのか分からないような屋号やそもそも普通には読み方が分からないような屋号をつける。
商売として考えたときに明らかに不利になるような屋号の付け方はお勧めできません。
2.かぶってない
屋号は商標登録されていないかぎり、ほかと名前がかぶってしまっても問題はありません。
でも、たとえばインターネットで検索したときにずらっと同じ屋号でたくさんの農家が表示されてしまうと、あなたを探しきれなくてあきらめてしまう可能性で出てしまいます。
どこにでもあるような屋号が悪いとは言いませんが、このインターネット全盛時代で同じ屋号がたくさんあるという事態は避けるべきです。
3.業種がイメージできる
世間から強く認識されている大企業でもないかぎり、屋号には業種がイメージできる単語をつけておくべきです。
自動車部品メーカーの株式会社デンソーは、昔は日本電装株式会社でした。
自動車メーカーのホンダは、本田技研工業株式会社ですが世間的にはホンダのほうが親しみやすいのでこちらをよく表に出しています。
小さな農家は、小さな事業体らしく屋号で業種がわかるネーミングにしたほうが無難だと思います。
まずは、とにかく知ってもらうことが重要だからです。
強いこだわりを形にする
今回の話はここからです。
上記に挙げた3つの注意点をふまえれば、なんとなく屋号がみえてくると思いますが、さらに深く屋号のもつ影響力を考えていきます。
まずは、自分が持っているこだわりを屋号に込めるということについて。
飲食店には読み方が分からない、おしゃれ優先の店名(屋号)がよく見られますが、そんななかでも特徴的な店名をもつ会社があります。
俺のイタリアン、俺のフレンチはご存知でしょうか。
一流レストランで活躍したシェフたちが、高級料理をお手頃価格で提供する立ち飲みレストラン。
「俺のイタリアン」、「俺のフレンチ」をはじめ「俺の割烹」、「俺のやきとり」、「俺の焼肉」などの店舗を展開しています。
俺のフレンチではフード原価率が60%以上あるにもかかわらず、回転率を高めることで利益を確保することができる、というビジネスモデルを確立しています。
一般的な飲食店の原価率が30%程度であることを考えれば、かなり特徴的な収益構造を持っています。
じつは、俺のイタリアンや俺のフレンチという店名はあくまでも店名。
松下電器産業がもっていたナショナル、パナソニックというブランドみたいなもので、屋号ではありません。
俺の株式会社
これが屋号、つまり会社名です。
俺の~という屋号からは、なにやら強いこだわりを感じませんか?
僕でもなく、私でもなく、オレ。
なにやら男臭さが漂ってきますし、自己主張の強さを感じます。
そして一度聞いたら忘れないインパクト。
屋号の付け方、3つの注意点をみても
わかりやすいし、読みやすい。
ほかともかぶっていません。
業種がイメージできるという点については、創業当時は
俺のフレンチ・俺のイタリアン株式会社
という屋号で事業を行っていることからクリアしています。
そこからさらに強いこだわりを屋号にこめている
俺の株式会社
は、インパクトのある素晴らしい屋号だと思います。
ここまで特徴のある屋号はなかなか思いつくものではありませんが、ほかとは違うネーミングは多くの人の心に残ります。
どこにでもあるようなありきたりの屋号ではなく、おっ!と気を引かれるようなセンスのある屋号を意識してみてください。
想いを伝える屋号
屋号がよくないからといってそれがそのまま収入につながるわけではありません。
でも、小さな農家だからこそ差別化をはかって他とは違うんだぞ感を前面に出していくべきですから、それを屋号にも乗せることは当然やるべきでしょう。
差別化、というと分かりにくいかもしれませんが、これは個を前面に打ち出していくということに近いです。
ほかとは違う特徴をどれくらい備えているのか、ここでしか買えない感をどれだけ伝えられるか。
それが差別化につながっていきます。
たとえば。
野菜を無農薬で育てている、有機農業をやっているという農家の場合。
安全性であったり、美味しさであったり、環境保全であったり、なにかしらのこだわりがあるはずです。
それを屋号に込めることを考えてみるんです。
なかなかイメージが湧きにくいかと思いますが、
松本自然農園
松本農園
このふたつの屋号を比べてみて、どのように感じるでしょうか。
受けとるイメージが違いませんか?
農薬や化学肥料を使った慣行農業とは違うんだ、自分は有機農業をやっているんだというアピールを、
自然
という単語に込めています。
そしてそれはイメージとして消費者にも伝わります。
もちろん自然ではなくストレートに”有機”、”オーガニック”といった単語を使ってもいいのかもしれませんし、ほかにもっと気の利いた単語があるかもしれません。
とにかく大切なことは、自分の想いを屋号にのせること。
自分が売りにしている、顧客に一番伝えたいことはなにかを考えて、それを短く的確な言葉に盛り込むことです。
なかなか難しいかもしれませんが、もし経営理念をお持ちならそこから連想することもできますし、そのまま適切な言葉を抜きだしてもいいかもしれません。
どうしても思いつかなければ、既存のセンスある農家の屋号から拝借してもいいと思います。
まあそっちのほうが手っとり早いですね。
だって松本自然農園を山田自然農園とかに変えるだけ、ですから。
(松本自然農園がセンスあるとは思いませんが・・・)
また。
消費者へのイメージを考慮するなら、表記方法にも注意すべきです。
さきほどの例でいえば、
松本自然農園
というのはなんだか堅苦しい、もしかしたら年配の方がやっているのでは?というイメージがついてきます。
これが、
まつもとナチュラルファーム
だったらどうでしょうか。
意味合いとしては同じですが、消費者が受け取るイメージはまったく違ったものになります。
どんなイメージを持ってもらいたいのかを考えて、表記にも気をつけるといいでしょう。

(画像参照:選挙ポスタードットコム)
こういったことは政治家が選挙のときによくやっています。
そこらじゅうに貼られているポスターを見てください。
名前にひらがなを使っていませんか?
本名は漢字だけで構成されているにもかかわらず、名前の一部もしくはすべてをひらがなで書く。
読み間違いがなくなりますし、なによりも漢字ばかりで構成すると硬いイメージを与えてしまいます。
だから。
やわらかくて温かみのある、フレンドリーな印象を与えるために、政治家はあえてひらがなを使ってイメージ操作を行っています。
屋号を考えるときはこういったイメージにも注目してみてください。
農園か農場かファームか
消費者に与えるイメージという点でいうと、
農園がいいのか、農場がいいのか、それともファームにしようか。
ちょっと迷うのではないでしょうか。
もちろんそういった言葉を使わないという選択肢もありますが、農家だということを端的に表現するならつけるべき単語のひとつです。
間違っているかもしれませんが、
農園には、わりと小さく家族経営でやっている農家のイメージが。
農場やファームには、大規模で手広く栽培を手がけているイメージがあります。
あくまでもイメージですが、屋号によって間違ったイメージをもたれてしまうのはもったいないです。
言葉がもつイメージを気にしながら、あれこれと屋号を考えてみてください。
屋号は慎重につけよう
屋号はあとで変更することができます。
とくに届け出をすることなく、勝手気ままに変更することができます。
でも。
それまで築き上げたブランドを捨てることになるので、あまりおすすめはしません。
あとから
「あーしまった安易につけちゃったよ」
と後悔しないためにも、スタート時点であれこれ時間をかけて考えて、納得のいく屋号をつけてみてください。
屋号はあくまでも慎重に決めるべきものです。
