小さくて強い農家になる 押さえるべき三つの原則

 

y3000-05

週休3日だとか時給3000円だとか言っていますが、これを実現するために

農作業のスピードをとにかく速くする
栽培技術を向上させていいものを作る

といった栽培面での改善だけに目を奪われていたら手が届く数字ではありません。
農家の仕事が栽培だけではなく多岐にわたることを自覚したうえで、栽培以外の部分で大きな改善をしていく必要があります。

これについては一般的な企業を見てもらうとわかりやすいです。
現場で作業をしている従業員よりも、その従業員を束ねて動かしていく管理職員のほうが給料が高いのはなぜか。
会社組織の中で社長の給料がもっとも高いのはなぜか。
このあたりを考えてみてください。
多くの給料をもらえるということは、それだけ多くの付加価値を生み出しているということ。
栽培そのものよりも経営全体にかかわる管理業務のほうが付加価値が高いということはお分かりいただけるのではないでしょうか。

だから、農家が収入を増やしたいとか短い時間で多くの収入を得たいと考えるなら、栽培以外の部分をしっかりと考えていく必要があります。

そんなことはいいから栽培を効率化していくコツを教えてほしい、と言われる方もいらっしゃると思いますが、すでに既存の農家が栽培について長年の経験から多くの優れた技術を生みだしているなかで、どれほど改善の余地が残されているでしょうか。

もちろんまだまだ手をつけるべきところはありますし、私も今後そのノウハウをご提供していきますが、栽培改善に手を出すよりも経営を見直していったほうが断然効果は大きくなります。
だって農業では経営についてあまりノウハウが蓄積されていませんし、農家は経営をほとんど意識しませんから。

 

赤点の恐怖

テストの点数をイメージしてみてください。
赤点ギリギリ40点を、勉強して平均点くらいに押し上げるのはそれほど大変ではありませんが、そこから90点や100点を取るための努力は大変なものです。
経営を見直すだけで赤点ギリギリだった40点が平均レベルの70点になります。
それは基本をおさえるだけの簡単なこと。
そこから100点をとるための努力が栽培技術の追求、くらいに考えておくと分かりやすいかと思います。

ですので、じれったいでしょうけど既存の農業から脱却するためにも、まずは経営全体を見つめるところから始めてみてください。

 

小さくても強い農家になるためには原則がある

とにかく大切なことは、仕組みをつくること
トウモロコシ1本を100円で売っている農家がいたとして、10万本を売れば1000万円です。
ここで。
トウモロコシ1本を200円で売るための仕組みができていれば、同じ10万本を売ったら2000万円です。
すでに高い栽培技術をさらに高めて10万本の収穫が12万本に増えたとしても、もともとの仕組みだったら1000万円が1200万円になるだけ。
仕組み(ビジネスモデル)を作っておくことは収入を大きく増やすための最重要課題なんです。

しっかりとした理論に基づいた筋力トレーニングは大きな成果をもたらします。
優秀な監督のもとで練習を繰り返してきたチームは甲子園の土を踏める可能性が高まります。
ブランド価値が高まったシャネルやルイヴィトン、スターバックスやドトールコーヒーは大きな利益を生み出す仕組みを作り上げています。
コンビニエンスストアがこれだけ普及しているのは、非常に高度に完成されたビジネスモデルを構築しているからです。

多くの例を挙げてみると分かりますが。
たとえ小さな農家であってもビジネスモデルがしっかりしていると、強く長く農家を続けていくことができるようになります。
では実際にどうしたらいいのか。
大規模化が進んでいくなかで小さくても悠々と生き残っていくためにはどうしたらいいのか。
小さな農家が押さえるべき3つの原則について下記にまとめてみましたのでご覧ください。

 

1・ビジネスモデル選び 利益が得られる仕組みを採用しなければいくら頑張っても報われない

農協の組合員になって言われるがままに指定された品目を定められたルールに従って栽培をして出荷をする。
そんな農業をやっていたら生活が苦しくなるのは目に見えています。
もちろん農協出荷すべてが悪いわけではなくて、儲かっている農家はちゃんと儲かっていますし、農協出荷の農家でもしっかりと経営を考えてやっているところはたくさんあります。
でも全体としてはイマイチなので、日本の農業は衰退しているとか農業は儲からないとか後継者が育たないとか、いろんな悪い話が出てくるんです。

もしかしたら。
農協という組織が持っているビジネスモデルは優秀なのかもしれません。
まがりなりにも日本の農業を支えているわけですし。
でもそこにぶらさがっている農家には、あまりおこぼれが回ってこないのが現状です。

業界全体が潤っているなら、その業界で採用されている一般的なやり方に倣えばいいのですが、農業は時給に換算すると1000円前後という悲しい業界です。
その農業界で一般的な農家に倣っていたらやっぱり時給1000円前後にしかならない。
当たり前のことだと思います。

2つの方向性

だからこそ既存の農家とは違うことをする
えっ?まじで?
と言われるようなことを実践していく。
そういう姿勢が求められます。
そういう覚悟が求められます。
ビジネスモデルというと何か堅苦しくて難しそうなイメージがあるかもしれませんが、簡単に言ってやるべきことは
一般的な農家の真似をしないようにする
ということだけです。
一般的な農業が儲からない仕組み(ビジネスモデル)を採用しているなら、あえて逆を選ぶことで意外とそれが儲かる仕組みだったりする。
そんなもんです。

一般的に農協へ出荷されているなら、別の販路へ出荷する。
一般的に農薬が使われているなら、農薬を使わないで栽培する。
一般的に会計はどんぶり勘定なら、きっちりと帳簿をつけて経営分析まで行っていく。
一般的な農家が家族経営なら、法人化したり独り農業を実践したりする。
一般的な農家が栽培情報をあまり公開しないなら、積極的に情報を発信していく。

農業界にも儲かっている農家はいます。
そういう農家は本を書いていたりしますから、本を買って読んでみればどんなビジネスモデルが儲かる仕組みなのか見えてきます。
だいたい異端児ですよ、そういう農家は。

 

2・マーケティング 他者にはない強みをもつ差別化戦略、弱者の戦略

マーケティングという言葉にはなにやら面倒くさそうな空気が漂いますが、マーケティングを簡単に言うと

セールスを楽にするための活動

となります。
つまりは商品をより高く、より多く売るためにはどうしたらいいのかを考えて作戦を練るのがマーケティングだということです。

これは置かれている状況によっても扱っている商品によっても変わってくる戦略ですので、こうしなさいと言い切ってしまうことができません。
でも、大企業がやるべきマーケティングと中小零細企業がやるべきマーケティングはまったく違うように、家族単位でやっている小さな農家がとるべきマーケティング戦略には一定のおおまかな方向性があります。

ごく簡単に言ってしまえば、小さな農家は弱者の戦略をとっていくべきです。
小さいからこその戦い方、大きな農家が真似できないような戦い方をするべきだということ。

小さな農家には小さいなりの戦い方がある 弱者の戦略

詳しい内容は上記リンク先にゆずりますが、単一作物をどーんと栽培して大量にまとめて売っていく大規模農家と同じことを、どーんと栽培してもまとまった量にならない小さな農家はやっちゃいけないということです。
小さな農家はこまかく、かゆいところに手が届く農業を展開すべき。

黄色いトウモロコシが一般的なら、バイカラーやホワイトのトウモロコシを育てるとか。
非常に珍しい食用ホオズキを手がけるとか。
洋食店が好みそうな珍しい西洋野菜を中心に商品ラインナップを揃えるとか。
アトピーなどの症状改善を求める方に向けて、安全性を追求した野菜を届けるとか。
ひとり暮らしで使いやすい1合小分けパックの米を販売するとか。
トマト狩りができる観光農園をやるとか。
坊主頭でタンクトップなどキャラクターで農園をアピールするとか。
農業への想い、栽培のこだわり、栽培の様子などをどんどん発信して顔の見える関係を追求するとか。


とにかく、

「なにそれそんな農業もあるの?」

という農家になればいいんです。
わかりやすい農業の形はだれもが手を出します。
だれでもできるということは大規模農家にやられたら小さな農家は勝てないということ。
そんな面倒なことやりたくないよ。
そんなもの作って買う人いるの?
といった路線をあえてとることで、だれとも競争せずにのんびり経営をすることだってできるようになるのが弱者の戦略です。

 

3・経営を意識する 生産、営業、流通、販売どこまで手掛けるか

農家は意外に経営を考えていません。
法人化して規模を拡張しているところはもちろん考えていますが、家族経営レベルの小さな農家はおそらく「経営」という言葉をふだんあまり意識していません。
とにかく生産だけを考えている感じです。
農協出荷する農家がよい例でしょうか。

もちろんそれが悪いわけではなく、生産だけに集中できることはある意味では幸せなことです。
農業をやりたいと思っている人はたいてい栽培を楽しみたいと思っていますから。
だから農協出荷は生産に集中して楽しむという点ではいいのですが、なにが問題かというと
収入に満足できない
ところが非常に大きい。

お金が欲しくて働いているのであれば、生活できるだけの収入が得られなければ不満は募ります。
じゃあちゃんとした収入を得るためにはどうしたらいいのかというと、そこで
経営を意識する
ことが必要になってくるんです。

あまり難しく考えなくてもいいです。
自分で育てたものを自分で売る。
生産だけじゃなく、営業・流通・販売なども手がける。
それが経営です。

ただ作っていればいい生産農家に比べれば、販売もしていく農家はもちろん大変です。
でも大変だからといって楽なほうに向かえば、そこには収入が伴わない農業が待っています。

作業者と管理者

現場で作業をしている従業員よりも、その従業員を束ねて動かしていく管理職員のほうが給料が高いのはなぜか。
会社組織の中で社長の給料がもっとも高いのはなぜか。

これを改めて考えてみてください。

高い給料が欲しければ、経営を意識する。
社長になったつもりで農家の仕事を考える。

すべては意識の問題です。
もしくは多くの責任を負えるかどうか、覚悟の問題です。
会社の社長は多くの給料をもらう代わりに、多くの商品に対する責任や多くの従業員に対する責任を負っています。
ものすごいプレッシャーや責任と引き換えに、多くの対価を頂いているんです。

今回は経営の中身については触れません。
それはまた別の記事で詳しく書いていきますが、とにかく経営を意識することで収入が変わってくることだけは覚えておいてください。


経営者の意識は欠かせない

農家になることは経営者になること。
そういう意識を持ったうえで、自分の強みはなにか弱みはなにかを知り、大手と競合しないような道を探していく。
その道を進みながら農家としてちゃんと生活できるだけの稼ぎを得る、そのための仕組みをつくっておく。

今回お伝えしたかったのはこういう流れです。
栽培の効率化や出荷の無駄をなくしていくことよりも、しっかりと仕組みをつくっていくことのほうが効果としては何倍も大きいので、面倒くさい話かもしれませんが長々と書かせてもらいました。
参考にしてみてください。

 

今回のチェック

●あなたがやろうとしている農業の形はどんなものですか?ちゃんと利益が出る仕組みになっていますか?

●小さいからこその強みを持っていますか?それは大きな農家が真似できないものですか?

●生産以外のどこまでを手掛けますか?営業、流通、販売・・・他人に任せるのはどの仕事?

 

 

 

関連記事