出荷基準を自前で持つことの真のメリット

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農協に代表されるような大口の出荷先があれば、その業者が規格や基準を設けているのでそれに従えばいいと思います。
というより従うしかありません・・・。
規格や基準はもちろん必要だからこそ定められているのであって、取引先の業者に逆らう必要はないでしょう。
でも。
よく考えてほしいのですが、その規格や基準は誰のためになっていますか?

大きさや形が揃っていたほうが売りやすい、という小売店の都合。

輸送に耐えられるように皮の厚い品種を採用する、という流通の都合。

箱詰めするときに隙間なく詰め込めて無駄がない規格(S、M、Lなど)で分類する、という流通の都合。

たいていは、小売店や流通、卸売業などそれぞれの都合によって、彼らが得するように決められています。
これはつまり、必ずしも消費者のためではないということ
ここに問題があります。

食べてくれる消費者のためになる規格や基準なら、生産者は喜んで手間隙をかけます。
たいていの生産者は、食べてくれる人が喜んでくれることに価値を感じてますからね。

ところが小売店や流通、卸売業などは規格・基準を末端の農家に押しつけます。
そして、苦しむ。
こんなに厳しい規格が必要なのか?
と疑問を持ちながら、
これが本当に消費者のためになっているのか?
と戸惑いながら、農家はかけなくてもいい手間をかけて生産を行います。

ではどうしたらいいんでしょうか?

 

直売最強説は間違っていない

結論から言ってしまえば。
規格や基準を決める業者との取引をなるべく減らして、消費者に直接お届けする。

つまり直売をすればいいんです。
消費者のためにならない規格や基準を作り出している業者がなくなれば、それは生産者にとっても消費者にとってもプラスですよね。

 

 

生産者は直売方式を取ることで、多くのメリットを受け取ることができます。
その最たるものが、中間業者をなくすことによる高い利益率です。

野菜の流通経路

農協に卸して、流通を委託して、その先に市場や小売店があって。
それぞれの業者が商品に利益を乗せています。
利益を上乗せする業者が多ければ多いほど、消費者が支払う価格は高くなりますよね。
たとえばこんな感じ。

生産者20円 + 農協30円 + 流通業者20円 + 小売店30円
= 100円(消費者)

この中間マージンがなくなれば、つまり利益を上乗せする業者が少なければ少ないほど、同じ100円で売っても生産者の取り分が増えるわけです。

生産者100円 = 100円(消費者)

確かにこれは、生産者が受け取るメリットとしては非常に大きいです。
直売いいね!って言われます。

でも。
本当のメリットはそこではありません。
だって考えてみてください。
中間業者をなくしたって、流通や小売という仕事は消えません。
生産したものは、消費者のもとへ運ばなければならないし、生産物を売らなければ利益になりませんから。
中間業者をカットするというのは、その業者がやっていることを自分でやるということ。

流通も小売も、農家自身がやるということです。

これは生産に集中できないデメリットをもたらします。
生産だけじゃなく、流通もやって、小売もやる。
いろいろやるから、中間マージンがなくなって利益率がアップするんですが、仕事の核になっている生産以外に手をのばすことは、本当に正解なんでしょうか?

詳しくいえば。
流通のプロ、小売のプロ、彼らの仕事を農家自身がやってはたしてどれくらいのクオリティで仕事ができるのか、という話です。
流通のプロや小売りのプロ、彼らがやっていることを自分でやったとしても、同じレベルでの仕事ができるはずがありません。

ヘタすると、効率が悪くなったり仕事のレベルが低くなったりして、お客様に迷惑をかける結果が待っているかもしれません。
ある程度のクオリティで仕事をこなせなければ、中間業者をカットして直売に踏み切ったとしても、逆に利益が減りかねません。
だから。
中間マージンカットによる利益率アップを狙って直売をするのは、じつはあまりおすすめできないんです。

ただし。
中間業者をなくして直売することの本当のメリットを知れば、たとえ流通や小売でプロの仕事ができなくても直売することのメリットが大きいことを実感できます。

そのメリットこそが、規格や基準を自分で決めることです。

 

虫食いはどこまで許される?

防虫ネット

無農薬で栽培していればもちろん、そうじゃなくても虫食いはかなり気を遣います。
ちょっとでも虫に食われた形跡があったら出荷できなかったりしますから。
農家はこの虫害による規格外品をなくすために、農薬の散布を徹底したり、ぴっちりと防虫ネットで覆ったり、虫の発生や食害をおさえるためのありとあらゆる手を打ちます。

じゃあここで。
ちょっとくらい虫食いがあっても許してね、という規格が存在したらどうでしょうか。
もちろん虫害のないよう栽培管理をしていきますし、なるべく虫害ゼロの生産物を出荷していきますが、

ちょっとくらい虫害があっても出荷できる

これは精神的にかなりラクですよね。

 

規格がゆるくなれば必要以上に虫食い跡を気にしなくてもよくなるので、出荷調整作業の軽減になります。
調整段階で規格から外れるロスも減ります。
栽培したけど全体的にちょっと虫害があるから出荷できず、という大損害も避けられます。

自分で虫食いがどこまで許されるのか、規格を決められるのはメリットになることがおわかりいただけたでしょうか。

 

まがりやサイズ規格

虫食いについては、プロとして虫食いがないのは当然だから関係ない。
という方でも、曲がりやサイズなど見た目の規格についてはメリットを実感できます。

キュウリイボ美人

たとえばキュウリ。
キュウリがなぜ曲がるのか、については日射であったり水分管理であったり要因がいくつかあるようですが、曲がらないように管理することはなかなか大変です。
キュウリ農家は、いかにまっすぐなキュウリを収穫するかに注力していますし、曲がり具合によって細かく分けられている規格にちゃんと該当するようなキュウリを収穫したいと思っています。

では、曲がっているキュウリの品質は劣るのかというと必ずしもそんなことはなくて、大きくくねったものは生理障害と言ってもいいレベルかもしれませんが、弓道で使うような弓のしなり程度であれば味も品質もまっすぐなものとほとんど変わりません。

キュウリの規格があるのは、箱詰めしやすいという流通の都合。
もしくはまっすぐなキュウリのほうが売りやすいという小売りの都合。

であれば。
直売によって自分で価格をつけられるなら、
ちょっと曲がっていても価格を下げない。
真直ぐでも曲がっていても同じキュウリとして扱う。
そんなことが可能になります。
曲がりを気にしなければ「工場か!」と突っ込みたくなるような栽培管理をしなくてもよくなりますし、極端な話をすれば地面を這わせる栽培をして果実の一部が薄く色あせていてもいいわけです。

規格を自分で持っているだけで、栽培がかなりラクになるし廃棄ロスも減る、ということですね。

 

これはサイズについても同様です。
キュウリやオクラ、ズッキーニなどの野菜は、収穫するべき大きさが決まっています。
長さ●cm~▼cmの範囲で。
とか。
重さ■g~▲gの範囲で。
といった規格です。
この規格を守るためには、毎日必ず収穫しなければなりません。
農家によっては一日2回とか3回、サイズを揃えるために収穫したりします。
それって本当に必要でしょうか?

野菜はサイズによって味が変わるので、品質を一定にすることは大切なことです。
美味しいサイズがあることは事実です。

でも消費者はそこまで求めているの?
そのサイズ規格は誰がつくって、誰のための規格なの?

と考えてみてもいいのではないでしょうか。

直売では消費者の声をダイレクトに反映できますから、ちょっとくらい大きさがばらついてもいいと購入者が感じるなら規格はゆるくなります。
スーパーで売っているサイズよりも大きいほうが好みだ、と言われたら大きめで収穫するようにすればいいですし。

栽培管理や労働時間にも影響を与えるのが、規格や基準です。
他人にゆだねるべきものではありません。

 

泥つきって消費者に支持されないの?

土つきニンジン

出荷における泥つき問題についても言及しておきます。
世のなかで流通している野菜は、ほとんどがきれいに洗浄されています。
一部、ゴボウなどは泥つきのまま出回ったりしますが、土がついていても問題なさそうな根菜類(大根、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモなど)ですらきれいな状態で売られているのが現状です。

これはもしかしたら、消費者が望んでいることなのかもしれません。
台所を汚したくないから、排水溝を詰まらせたくないから、といった理由で泥のついていない野菜を選んでいるのかもしれません。
でも。
すべての消費者がそうではないはずです。
泥つきでもいいよ、という人だっているとは思いませんか?

もし泥つきでも大丈夫なんだとわかれば、洗う手間が省けますよね。
さっと表面の土を払い落すだけで調整作業が終わります。
洗浄機なるものを導入して、つるつるピカピカにしてから出荷する農家が多いなかで、洗浄するひと手間をカットして省力化を図る。
これはおそらく消費者へ直販していなければ実現不可能です。
だって流通、小売業者が許しませんよ。

 

 

虫食い、曲がり、サイズ、泥つき。
これらの例から見えてくることは、規格がゆるいことで出荷の手間が減るだけではなく、栽培の手間にまで影響を及ぼすという点。
虫食いが少しぐらいあっても良いなら、栽培管理が少しゆるくなります。
形やサイズの規格がゆるいなら、こちらもやはりシビアな栽培管理を求めなくても良くなります。
それはつまり、
栽培の手間が減る = 労働コストが減る
ということ。
さらには、同じ価格で販売をしているのに労働コストが少なくなる、つまり時給が高くなるということにつながります。

たんに栽培を追求していって収穫量を高めることは、多くの農家がやっています。
収穫量が増えれば売り上げが増えますから。
でも、出荷規格・基準を自分で決めることで労働時間が減り、栽培へもコスト削減効果が期待できることはあまり意識されていません。
だからこそやる。
他の農家がやっていないからこそやる。
こういう考え方は一歩先を歩くためには必要なことです。

 

出荷基準を自前で持つことの本当の価値

まず考えてほしいのが、

その規格は誰のためにあるのか

ということ。
規格をきっちり守ることが消費者のためになるならいいんですが、そうじゃない規格は生産者である農家を苦しめることになります。

そして。
中間業者をなくすことの本当のメリットは、マージンカットではなく規格カットです。
自分の顧客にとって喜ばれるものを提供する、それだけを追及すれば、おのずと出荷の手間は減っていきますし栽培にも無駄がなくなります。
それには直売をすることが最も近道です。

直売をして自分基準を持つ。
それは多くの農家がやっていないからこそ、栽培を突き詰めていくよりも改善効果が高いんです。
栽培の追求なんて多くの農家が必死になってやってますし、その土俵では先輩農家と対等に戦うことは難しいです。
他がやっていないことにスポットを当てて、そこに切り込んでいく。
そういう発想を持てば、べつに出荷基準じゃなくても他の改善で大きな効果をあげられるはずです。

ぜひお試しください。

 

 

今回のチェック

●直売のメリットは中間マージンカットではなく規格カット

●虫食い、曲がり、サイズ、泥つきなどの規格打破は、出荷だけでなく栽培でもコスト削減を生みだす

●他の農家がやっていないことにこそ大きな効果がある

 

 

 

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