品種選びで経営が変わる

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品種選びが重要であることは、農業者なら誰でも知っています。
一般消費者はキュウリはキュウリ、キャベツはキャベツという認識しかないことがほとんどですが、農業者であればキュウリにはたくさんの品種がありそれぞれ違った特徴・特性を持っていることを知っています。
キャベツには、見た目はほとんど同じでも病気への耐性・抵抗性が違ったり、季節に合わせた適切な作型があったりすることを知っています。
そして。
その品種の選び方ひとつで、栽培がラクにも大変にもなることを知っています。

品種を変えたら収量が上がった。
病気が出なくなった。
美味しいと言われるようになった。

こういうのはよく聞く話です。
とにかく農業者は、品種の重要性をよくわかっています。

今回は。
そこからさらに一歩進んで、品種選びで経営がラクになる話をしてみたいと思います。

 

ターゲットの絞り込みで明確になる品種

誰に売る

農業を始めるときに、まず一番に決めなければならないことは、慣行農法か有機農法かといった農法の選択ではなく、どんな肥料を使って栽培するかでもなく、

誰を顧客にするのか

ということです。
自分の育てたものを誰に食べてほしいのか。
誰に買ってほしいのか。
これがはっきりと見えていないと、農業は一歩も前には進めません。

高齢者に食べてほしいのか。
病気の人に食べてほしいのか。
赤ちゃんに食べてほしいのか。
舌の肥えたレストランのシェフに食べてほしいのか。

小さな農家のとるべき戦略は、大規模農業が真似できないような路線、つまりニッチ戦略です。
顧客となる対象を絞り込んで、小さな市場を狙っていく。
市場が小さすぎて、大規模農業が見向きもしないようなニッチを狙うと、競合が少ないので小さな農家であってもじゅうぶんにやっていけます。
大衆向けの、誰にでもそこそこ好まれるようなものを売ったとしても、それは大規模農業とぶつかるので価格競争で確実に負けてしまいます。
とにかく対象を絞り込むことが重要です。

顧客が望むものを、顧客が望む形で提供する

これは覚えておいてください。
同じメロンを提供するにしても、一個丸ごと売るのか、カットして売るのか、ジュースにして売るのか、顧客が望む形は違います。
同じトマトを提供するにしても、とにかく甘いミニトマトなのか、昔ながらの青臭さがあるトマトなのか、煮込むと旨みが出る加工用トマトなのか。
欲しがるものは人によって違います。
ニーズは多様化しています。

誰がどんなものを欲しがっているのかを想像して、その欲しがっているものをドンピシャで提供できれば、万人受けするようなボヤけた商品よりも確実に売れます。

 

このように対象をしっかり絞り込んでいくと。
品種もおのずと決まってくるものです。

高齢者に食べてほしいと思えば。
食事の量そのものが少ないからミニ野菜として出荷できる品種を選びます。
トマトは昔ながらの青臭いものが好まれるかもしれません。
珍しい品種は使い方が分からないからと敬遠されるので、ごく一般的な品種を採用することになります。

赤ちゃんに食べてほしい、離乳食を想定するなら。
品種もそうですが、まず品目が絞り込まれます。
葉野菜よりも根菜類を欲しがりますし、ミキサーにかけやすい品目がいいでしょう。
ニンニクやミョウガ、唐辛子など香味が強いものは避けるようになります。
サツマイモは離乳食に最適ですが、栄養価としてポリフェノールを多く含んでいる紫系サツマイモ品種はとくにお勧めできるかもしれません。
特徴をはっきりさせて離乳食用サツマイモです、と売れば買ってもらいやすくなります。
ジャガイモにしても、ねっとり系のメークインよりホクホク系の男爵・キタアカリなどが好まれます。
栗のような甘さがウリの「インカのめざめ」あたりを離乳食用ジャガイモとして売ってもおもしろいですよね。

レストランのシェフに食べてほしいのであれば。
そもそもスーパーで売られているような一般的な品種は好まれません。
フレンチなどはとくに珍しい品種が好まれます。
フェンネル、コールラビ、アーティチョークなどの西洋野菜。
紫アスパラ、赤オクラ、赤ダイコン、黄ニンジンなど、彩り豊かな品種。
家庭向けとはまったく異なる品種選びが必要になります。

 

大切なことは。
対象とするべき顧客がしっかりと絞り込まれていれば、選ぶべき品種はおのずと決まってくるということ。
これを知っていると品種を選ぶのは決して難しいことではないことが分かってきます。

 

小さな農家にピッタリあう摘み取り型品種

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選ぶ品種によって働き方が変わることもあります。
分かりやすいところで言うと、
レタスはほとんどの場合は株どりしますが、焼き肉のときに使うチマ・サンチュというレタスは葉を一枚ずつ摘み取っていきます。
スーパーでも葉が10枚くらい袋に入って売られてますよね。

レタスの株どりと摘み取り。
栽培管理はそれほど大きく変わりませんが、じつは決定的に違うところがあります。
それは栽培面積
たとえばレタスの株どりを1000株分育てようと思ったら、
畝幅150cm×株間30cm×3条植え ⇒ 150㎡
くらいの面積が必要になります。
それは、株どりなので一度収穫してしまえばおしまい。
片付けて、また次作の準備をしていきます。

でも摘み取りは違います。
同じ株からずっと収穫します。
葉が大きく育つたびに、外の葉をどんどん摘み取っていきます。
春作なら、地域や条件にもよりますが4月中旬くらいから2ヶ月間くらいはずっと収穫し続けることが可能です。
正確にはわかりませんが、もし収穫する枚数が2ヶ月間でレタス株どり5個分くらいになったとすれば、
同じ収穫量を得るための栽培面積は1/5で済むということです。

これって意外に大きな要因で。
小さな面積で必要な収穫量を確保できるというのは、コンパクトな経営をしたい農家にとっては非常にありがたいことです。
栽培面積が小さくなれば、耕作のための機械が小さくてもよくなって、栽培管理のための作業時間も減ることになります。
単純にはいえませんが資材費も減る可能性があります。

このような摘み取り型の品種は他にもいろいろあって、

ブロッコリー
菜の花
芽キャベツ
春菊
ニラ

などは摘み取り型の品種があります。
そもそも果菜類はほとんどが摘み取り型ですし、夏の葉野菜モロヘイヤ・ツルムラサキ・空芯菜なども摘み取りが基本です。
夏以外の季節でも摘み取り品種をいくつか採用してみるだけで、栽培総面積はかなり小さくなる可能性がありますよ。

ただし。
摘み取り収穫は、株どりにくらべると格段に収穫に時間がかかることだけは覚えておいてください。
それを考慮したうえで、小さな面積でコンパクトな経営をしたいと思っているのであれば、摘み取り品種の採用はプラスに働いてくれるはずです。

 

魅惑の品種ワールドへ

品種の世界は奥深いものです。

収量を上げたい、病虫害を軽減したい、品質を向上させたい

など従来からの品種に対する要望にとどまらず、

顧客ニーズを満たしたい、経営効率化を図りたい

といった要望を満たせるところまできています。

取引先から品種まで指定されているならともかく、自分で品種選定の権利を持っているならこれは活かすべきです。
品種をうまく選ぶことで栽培がラクになるのはもちろん、経営もラクになります。
品種の奥深さを知り、いろいろと調べてみてください。
おもしろいですよ。

 

今回のチェック

●顧客ニーズを満たすための品種選びがある

●栽培面積を小さくするために摘み取り品種を選ぶ、という選択がある

●奥深い品種の世界を知ると、農業はもっとおもしろくなる

 

 

 

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