7:2:1の法則

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人生長く生きているといろんなことが起きます。
平凡に生きているつもりでも、多少の波風はあります。
農業の道に進んでいくことは、まさに波風の中を進んでいくようなものですし、そこで転覆しないで航海し続けることはなかなか難しい。
数年で離農する人たちをけっこう目にすることからもそれが分かります。

今回は、リスク分散の話。
荒波のなかを進んでいくにはそれなりの準備が必要で、ある程度の操縦術も欠かせない。
不測の事態に備えるにはどうしたらいいのか。
大波を小波に変えていくリスク分散手法のひとつについてふれていきます。

 

ひとつに依存することの怖さ

荒波

まずは、リスクへの備えとはなにかという話から。
これは単純に、なにかやばいことが起こったときに大損害を避けるための前準備のこと。
どうしても避けられない事態は必ずありますから、被害を最小限におさえるためにとっておくべき対策があります。

リスクへの備えとして分かりやすいのは保険ですね。
自動車保険、火災保険、生命保険、医療保険などなど。
保険は日常でふりかかってくる大波を小波に変えるための対策です。

農業においても大波は襲ってきます。
それをどうやって小波にしていくのか、大波にうまく乗っていくのか、方法を知らなければ船は転覆してしまいます。
台風が来たときのための対策。
虫害が大きく広がってしまったときの対処。
市場価格が大暴落したときに備える保険。
突然の怪我や病気で離脱したときのための備え。

なにがいつ起きるのかは予測不能、だからこそ事前にリスクを回避するために備えておく必要があるわけです。

 

さてここで。
ビジネスではという数字は非常に危険だと言われています。
取引先がひとつしかない。
これは危険ですよね。
大企業の下請けなどがその典型ですが、取引先がとつぜん契約を破棄すると言い出したら・・・。
取引先が大幅な値下げを要求してきたら・・・。
その取引が不成立の場合、一瞬にして会社はつぶれます。

販促手段がひとつの場合はどうでしょう。
チラシ、新聞広告、ネット広告、クチコミ、紹介、ホームページ、facebook・・・。
どれかひとつしか販促手段を持っていなかったら、それがなにかの拍子にストップしたときに集客ができなくなります。

農業においても同じです。
取引先や販促手段がひとつしかないのはリスクでしかありません。
ほかにも、資材(機械、支柱、タネ、肥料など)の購入先がひとつしかなければ価格交渉の余地がなくなりますし、在庫切れなどで納入されなければ生産活動に支障が出ます。

生産品目をひとつに絞るのもじつは危険。
キャベツならキャベツ、トマトならトマトだけを生産している農家は非常に多いですが、市場価格が下落すれば大きな打撃をうけますし、病虫害が一気に広まって作物が全滅したときの被害は想像するだけでおそろしいです。

このように。
いろんな要素において、ひとつに頼っていることは経営上かなり危険なんです。

 

7:2:1の法則

だからこそ、効率は悪いしコストも余計にかかるけどリスク分散のために選択肢を増やしておくことは大切。
ビジネスにおいて危険な1という数字にならないように気をつけることは重要です。

このとき。
リスク分散すればいいのはわかったけど、どれくらいの割合でどれくらい分散させたらいいのか、いまいち分かりませんよね。
そんなときに参考になるのが7:2:1の法則です。
おもには品目・品種の選びかたで用いられる法則ですが、ほかにも活用できるかもしれません。

7:2:1というのは、割合を示しています。
7割:2割:1割です。
主力:次候補:実験という意味付けで分けていきます。

 

品目でこの法則を当てはめられるのは野菜セットをつくる農家がやっている多品目栽培くらいだろうと思います。
年間を通して50種類、100種類の野菜を育てて、それを詰め合わせセットの形でお客様のもとへお届けする。
そういった野菜セット農家なら、7:2:1の法則を品目で当てはめることができます。

 

たとえば50種類の野菜を育てているとして、そのうちの7割にあたる35種類は主力品目。
野菜セットをつくるうえで欠かせない主力品目です。
そして、2割にあたる10種類は次候補品目。
すこし作型としては難しいけど、うまく育てられるのであれば野菜セットの内容が充実するであろう品目。
珍しい品目だから顧客に受け入れられるか分からないけど、将来的には野菜セットに組み入れていきたい品目。
そういう扱いの品目を2割ほど揃えていきます。
さらに残り1割の5種類は実験品目。
栽培難易度はかなり高いだろうけど、実験的に試してみたい作型の品目。
顧客に受け入れられる気はしないけど、おもしろそうだからやってみたいし、プレゼント企画などで使えるかもしれない品目。
といった、かなりきわどい実験的な品目を1割だけやります。

 

じつはこの法則。
私が【最強の脱サラ新規就農】のなかで販売している
多品目栽培計画表フィールドプランでは、しっかりと意識して計画が作られています。
7:2:1の割合を【重要度】という項目で、A:B:Cで表示しています。

(フィールドプランとは、野菜セット農家が必ず作らなければならない栽培計画を、私が営農10年の経験をベースにして練り上げた播種計画表。営農年数の少ない農家が持ち合わせていない経験を詰め込んだ、プロ農家として必要な道具・武器です。)
興味がありましたら下記URLにアクセスしてみてください。
https://ggfield.jp/mistake2/

 

7:2:1の法則は、品種についても適用することができます。
というよりも品種にこそ適用すべき法則です。

たとえばキュウリを栽培しているとして。

主力品目である「夏すずみ」を70株ほど植えておけば、必要な栽培量はだいたい確保できます。
とはいえ、さきほどから書いている不測の事態、病虫害があるかもしれないし、タネの販売が突然ストップするかもしれない。
圃場内でナントカウイルスにかかって全滅してしまったとき、翌年はそのウイルスに抵抗性を持つ品種を使いたいですよね。
その品種のタネが手に入らないなら、翌年は他の品種を使うしかないですよね。

でも。
これまでに使ったことがない新しい品種を採用することは、じつはけっこうなリスクです。
その品種の特性が分かっていないし、育ててみないと見えてこないクセ、自分の圃場との相性などがあるからです。
だから事前に、少しでも保険として新品種を試しておくことは重要なんです。

キュウリイボ美人

「イボ美人」を20株、同時に栽培してみることで、不測の事態に備える保険になります。

また、自分自身の好奇心を満たすため実験的な品種にも常に挑戦しておきたいところ。
これはないだろ~、お客さんはどんな反応するかなぁ、という珍しい品種を少しだけ育ててみる。
方向性はまったく違うけど、この品種を育ててみることは自分にとってプラスになる気がする。
そういう品種を1割程度、栽培に組み込んでおきます。

たとえば「半白節成」を10株ほど。

「夏すずみ」を70株
「イボ美人」を20株
「半白節成」を10株

少なくとも3品種、多ければ4~5品種ほどを組み合わせて、7:2:1の法則を意識した株数割合で栽培していく。
リスクに備えながらも、主力品目を軸にして、長期的に安定して出荷をしていくことができます。

 

野菜セット農家がこれをやると、品種の数はとんでもないことになります。
育てている品目は50種類であっても、150品種~200品種を扱うことになるので。
まあそこは、すべての品目で7:2:1の法則を当てはめなくても、やっておいたほうがいいだろうなぁというものに絞るだけでも効果があると思います。
すべてを完璧にやろうとすると・・・しんどいですよ。

 

リスク分散は長く続けていくため

今年だけを考えれば分散する必要なんてありません。
不安定要素が多い農業だからこそ、すこしでも安定させる方向に持っていく必要があります。
小さな農家は小舟のようなもの。
外洋をすいすい進んでいく大型船舶(大規模農家)とは根本的に違います。

ちょっとした波でも気をつけないと転覆しますし、小さなエンジンでは速く進むこともできません。
ですが、操縦する船長の腕ひとつで船旅はいくらでも快適になります。

小舟をうまく操縦するためのコツとして7:2:1の法則を活用してみてください。

 

 

 

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