常識を疑うPDCAの実例10パターン

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PDCAサイクルは、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ。 Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する。(Wikipediaより)

日本の農業がもし強い産業で、農家の平均年収も非常に高ければ、先輩農家の真似をしているだけで新規就農者であってもある程度の高い収入を得られると思います。
しかし、残念ながら現状は違います。
全体としてみれば農家の収入はかなり低い
作物別、年齢別、兼業or専業など統計を細分化していくと、収入格差のようなものはもちろん存在します。
とはいえ一言で表すなら「農家の収入は低い」で間違いありません。
ただし。
規模が大きければそれなりに収益を上げているという統計があるので、個人農業でも雇用をして規模拡大をしている農家は収入が伴っているし、農業法人も全てではないが収益としては申し分ないものとなっています。
一方、悲しいことに小さな規模の農業、家族でやっているような農家ではアルバイトをした方が良いんじゃないかと思うような情けない数字を残しています。

つまり。
大多数を占める小規模農家は、たいして儲かっていない。
それが日本の農業の現状です。
ということは、先輩農家の真似をして同じように栽培して、同じように売っていたら、同じような収入にしかならないということです。

これから農業をやろうとしている人にとって、収入は最優先で考えますよね。
生活の糧として収入は大切な要素ですから。
だとすれば。
まずやるべきは、既存の農家の真似をしないこと。
常識の範囲内で収まらないこと。
もっと言えば、農業の常識を疑うことが必要です。
同じようにやっても収入が低いのであれば、その道を辿ることはNGですよね。

周りの農家がやっていないことを率先してやり、非常識だと思われていることを、勇気を持ってやってみる。
非常識を積み重ねることで、非常識な収入を得られるということです。

今回は。
一般的には非常識と思われるような事例を10ほど挙げてみます。
他の記事で詳しく解説している例もありますが、今回の記事については事例ひとつひとつを詳しく知ってほしいわけではなく、真似すれば収入がアップする確証があるわけでもなく、
常識を疑って改善をしていく
という、そのパターンをつかんで欲しいと思っています。

 

事例1:無肥料、無堆肥。堆肥は完熟であるべき?

化成肥料

作物は肥料を入れなければ十分に育たない、と言うのが一般的な常識です。
しかし、自然栽培のように無肥料でもある程度の結果を残している例も少なからず存在します。
まだまだ爆発的に普及するレベルに至っていませんが、作物は肥料で育てるものだという常識を覆してくれそうな事例もちらほら見受けられます。
これを無視することはできません。
なぜ肥料が必要なのか。
それをしっかりと考えて、肥料の必要性を疑ってみて、ためしに無肥料の区画を設けて実験的に栽培してみる。
その結果を見て、仮説を立て、次の実験もしくはメインの栽培へ活かしていく。
いわゆる計画→実行→検証→改善を繰り返していくことで、無肥料でも作物は育つんだということが実証できるかもしれません。
とにかく大切なことは、肥料の是非を疑うこと。
まずはそこからだと思います。

 

事例2:耕す、草を生やす、生草をすきこむ

耕すことは、農作業全般の中でも大きなウエイトを占めています。
ここに手をつけることは栽培に大きな影響を及ぼすはずです。
なぜ耕すのか、耕すのは本当に必要なことなのか、
をよく考えてみて、耕耘のメリット・デメリットを挙げてみる。
自分自身の栽培体系の中で、どんな耕し方が有効なのか。
耕さないという選択肢はあるのか。
一般的には耕耘することが常識で、不耕起は非常識のように扱われていますが、最初から耕耘ありきで進めてしまうのは非常にもったいないです。
もし不耕起という可能性を捨てきれないなら、まずはやってみる。
圃場全体の一部でもいいからやってみる。
そして結果を検証して、改善すべきところは改善すればいいのではないでしょうか。

 

草生栽培

また、 栽培中に草を生やすことはデメリットが大きく、非常識だというのが一般的な考えとなっています。
しかし、草を生やした区画と生やしていない区画を比較実験したことがある農家は、おそらく少ないですよね。
生やしたこともないのに、一般的にそうだからといって草を毛嫌いする。
そんな傾向すら見受けられます。
本当に草を生やすことはタブーなのか、真正面から向き合って考えるべきではないでしょうか。

 

草についてもうひとつ。
刈ったばかりの生の草を、枯れる前にトラクターなどで耕耘してすき込んでしまう。
そのあとすぐにタネをまいたり苗を植えたりするのはタブーとされています。
これは、土の中の生草が分解するときに発酵熱を出すため、植えた苗の根を痛めてしまうとか、耕耘直後は微生物の活動が活発になり混沌としているため病気にかかりやすかったり、草の分解過程で窒素を必要とするため窒素飢餓になりやすいとか、いろいろ言われます。
こういう話には科学的根拠があったりして、おそらく正しいのだろうと思います。
でも。
栽培の書籍に書かれているような、
定植の2週間前までに耕耘・畝立てを済ませておく
といった常識を鵜呑みにして、それを守ることが本当に大切なのを考えてみてください。
その2週間がたとえば3日に短縮できるなら、栽培はもっと楽になりますよね。
事前に耕耘するのを忘れていて、そのせいで定植が予定より遅れた、なんてミスが減ります。
だって定植の3日前までに畝立て出来てたらいいんだから。
小松菜のような葉菜類だったら、なにも植えていない2週間の熟成期間が大幅に短縮されるので、年5作が年6作になるかもしれません。
すべてのはじまりは、本当に耕耘直後の種まきや定植はタブーなのか、です。
疑問を持つことがなによりも重要です。

 

事例3:出荷調整の洗浄

泥つき人参

作物を商品として出荷する時には、畑の土を綺麗に洗い流してから出荷することが一般的です。
しかし、本当に綺麗にすることが必要なのかを考えてみるべきではないでしょうか。
スーパーなどに並べられるのであれば、確かに見た目は重要です。
綺麗なほうが手に取ってもらえる確率は高いと思います。
でも、顧客に直接販売するような売り方をしている時には事情が変わります。
見た目よりも、味であったり安全性であったり、希少性であったりと違った価値観が重視されることも多いんです。
その場合。
必ずしも土を洗い流しておく必要はないのではないか。
土がついていても苦情はこないのではないか。
と疑ってみる姿勢は大切です。
もし洗わなくても大丈夫なんだと分かれば。
洗浄する手間が省けて、それが価格に反映されます。

洗うべきか洗わないべきかというのは、購入者が誰なのかによります。
購入者が何を望んでいるかを考えたうえで判断すべき問題であって、一般的に洗っているから自分もそうするというのはあまりにも浅はかな考え方ではないでしょうか。
商品はきれいじゃなきゃダメ、という常識を疑ってみましょう。

 

事例4:出荷調整の梱包

出荷時の梱包についても同じことが言えます。
スーパーに行けば、ひとつひとつ丁寧に袋詰めされた野菜や果物などを見かけることがありますよね。
それは、不特定多数の消費者に対して販売する場合、見栄えを重視するため、もしくは長時間陳列しておくための鮮度保持の目的から、袋詰めは必要なことなんでしょう。
エンドウやミニトマトなど、袋に入っていないと困るものもありますし。
でも。
ここでもやはり、購入者が何を望んでいるかをまず第一に考えてみるべきです。

野菜セットのように、大きな箱にいろんな野菜を詰め込むときには、ナス・キュウリ・ピーマン・トマト・ジャガイモ・タマネギそれぞれがすべて袋詰めされていなきゃダメなんでしょうか。

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スーパーで買い物したあとビニール袋にいろんな商品が詰め込まれているように、すべての野菜が袋詰めなしにそのまま詰め込まれていたら、なにか問題はあるんでしょうか。
もし。
一つ一つ袋詰めが必要ないのであれば、手間を省くことができます。
その分を価格に反映させることができます。
梱包したほうが良いのであれば、もちろんそうすればいい。
でも何も考えずにただ一般的にそうしているのが常識だから、といって従うのは間違っていると思います。

 

事例5:朝から晩まで働く

農家のイメージは、朝から晩まで年中無休で働く。
そんな姿が連想されますが、そんな働き方をしていたらどれだけ収入が多くても労働時間が長いせいで、時給換算するとかなり低いという結果に終わってしまいます。
時間にゆとりがあり、収入にも満足している。
そんな農家になりたいなら、朝から晩まで働くという常識は捨てなければならないと思います。
じゃあ朝から晩まで働かないためにはどうしたらいいか。
考えて、実際にやってみる。
そして、その結果を踏まえて検証して、改善していく。
たとえば9時~17時しか働かない、といった時間制約を課すことが有効なこともあるでしょう。
朝から晩まで働くなら、それに見合った収入を得るために生産効率を高めていく。
という道もあるでしょう。
とにかく大事なことは、一般的な働き方を疑うということです。
会社に時間を切り売りしているサラリーマンとは違って、自営業である農家は時間を自分で管理する必要があります。
働きすぎる傾向が強い農業だからこそ、時間管理にも疑いの目を向けてください。

 

事例6:価格設定

極端に言えば、
大根は1本100円くらいだという常識を疑ってみてください。
1本1000円は間違っているのか?、と。
ようするに適正価格ってなんなのか、を改めて考えてみるということです。

あえて言うまでもないですが、小さな農家が強い農業を続けていくためには、農家自身が価格決定権を持っていることは必須です。
そして、たとえ価格決定権を持っていても、大規模農業がやっているような薄利多売路線の土俵に乗って、安売り競争の道に進んで行けば、体力のない小さな農家は長期的にみれば勝つことができません。
小さな農家がやるべき事は、顧客ターゲットを絞り込み、大規模農業が入り込めないニッチなニーズをつかみ、そこに向けて適切な価格で商売をしていくことです。
この時、価格をどのようにして決めていくのかをしっかり考えてみてほしいと思います。


価格の付け方にはいろいろな方法がありますし、それらをひとつひとつ解説したほうがいいんでしょうけど今回はパス。
気になるようでしたら下記のリンクをご覧ください。

いいモノを作れば売れる!は農家の間違った思考

たとえば、ものすごいニッチで類似する商品が見当たらないものを扱うのであれば、かなり高価格でも買ってもらえます。
需要が少ないので数量は出ませんが。
このとき、数が出ないのに一般的な価格に照らし合わせて決めていたら・・・。
商売が成り立ちません。

まずは「大根は1本100円くらいだ」という思い込みを外すこと。
大根1本1000円で売るにはどうしたらいいのか、をスタート地点にして考えてみても、これはこれでおもしろいと思います。
実際、3000円/10kgくらいが相場なのに、その10倍の価格で米を売っている農家がいますからね。
非常識ですがやり方によってはアリなんです。

 

事例7:トマトの無支柱栽培

トマト多段栽培

一般的にトマト栽培では、支柱やネットを使って、地面から上に作物を立てていく栽培がとられています。
これはもちろん理にかなっていて、風通しが良くなり病気にかかりにくくなる、そして収穫がしやすくなる、収穫物が泥はねによって果実が汚れることがなくなる。
と色々なメリットがあります。
でもここであえて、本当に支柱やネットが必要なのかと疑ってみるのはどうでしょうか。
トマトを支柱を立てずに、芽かきや誘引もしないで放任で育てたらどうなるのか、考えてみたことがありますか?

 

トマトを放任で栽培すると、上ではなく横に、放射状に広がっていきます。
この時、根っこも地上部の茎葉と同様にかなり広く多く増えて広がっていくので、根量の多さがプラスに作用して病気にかかりにくくなります。
もちろん放任なので芽かき、誘引といった作業をすべてカットできます。
デメリットは収穫が大変なこと。
ジャングル化したトマトから果実を取り出していくので大変です。

芽かき、誘引などの管理に時間をかけるのか、収穫に多くの時間を割くのか。
それを天秤にかけてみる、常識を疑ってみてはいかがでしょうか。
もちろん一般的な栽培が普及しているのにはちゃんとした理由があります。
経営として見たときにも合理的なのかもしれません。
でも、それが本当に自分にも当てはまるのか考えるべきです。

たとえば。
売り先が不特定多数ではなく、直販しているお得意様ばかりだったら。
もしかしたらトマトのヘタがなくても問題ないかもしれませんよね。
食べる時はヘタをとってしまうわけですから、ヘタがなくても良いというお客様がいたって不思議じゃありません。
ヘタはなくても構わないから、そのぶんたくさん頂戴、もしくは安くして。
そんなお客様だったら、丁寧に収穫しなくてもいいんですよ。
あえて収穫が大変な放任栽培にしても、ヘタを気にせずザザッと採っていくので時間はかからない。
しかも芽かきも誘引もいらないから作業時間は大幅に少ない。
とは考えられませんか?

この話の合理性を追求したいわけではありません。
ここで言いたいことは、顧客目線に立ち、その栽培管理は本当に必要なのかを疑ってみる姿勢が大切だと言うことです。
非常識管理にはどんなメリット・デメリットがあって、顧客目線に立った時になにか不具合はあるのか。
色々と検証して、試してみて、改善をしていくことで、労働時間が下がったり収益が上がったりしていきますよ。

 

事例8:じゃがいも・ネギの土寄せ

これは非常識というか、実際に書籍などに載っている方法です。
非常識が常識になりつつある例として挙げておきます。

ジャガイモ土寄せ

一般的な栽培としてジャガイモやネギは、イモの緑化を避けるためもしくは、ネギの軟白部を伸ばすために土寄せを行います。
でもここで。
本当に土寄せが必要なのかを疑ってみるんです。
土寄せをしなければ、当然ですがイモは緑化するしネギの軟白部は伸びない。
であれば、別の方法で同じ結果を出せないかを考えてみるんです。

ジャガイモマルチ

ジャガイモであれば、光を通さない黒マルチで育ててみたらどうか。
ネギであれば、育苗の段階で大苗を育てて、深く穴を開けたところにその苗を落とし込むなどの方法はどうか。
一般的ではありませんが、これらの栽培方法は実際に一般化されつつあります。
これによって労働時間が大幅に減ったという話も聞きます。
土寄せ作業そのものがなくなりますからね。
作業工程一つ一つを疑い、改善の余地がないかを検討してみる。
そういう姿勢は 大切だと思います。

 

事例9:育苗ポットの必要性

トマト苗

トマト、ナス、ピーマンなどの果菜類は、一般的に苗を作っておいて畑に植えます。
なぜ苗を作るのか、という根本的な問いは話が長くなるので割愛しますが、果菜類の苗はポットと呼ばれる柔らかいプラスチックの鉢で育てられることが一般的です。
ポットの土の量は多いので、長期間の育苗ができて、それなりに大きな苗を育てられるからです。
ここで考えるべきは、大きな苗じゃなければダメなのか、ということ。
たとえば9cmポットで育った苗を4月中旬に定植して、6月下旬から収穫が始まる。
これが標準の作型だとします。

セルトレイピーマン

じゃあ、ポットではなくセルトレイで小さな苗を育てておいて、同じく4月中旬に定植したらどうなるのか。
ちょっと遅れて7月上旬から収穫が始まる。
この1週間か2週間の収穫期間の差が、経営にどれくらいの影響があるのかを考えるんです。
育苗でポットではなくセルトレイを使うというのは、培土の量がぜんぜん違います。
育苗する面積もかなり違います。
ピーマン専業農家であれば、収穫期間1週間の違いは売り上げに大きく差が出るかもしれません。
でも農家によっては、育苗ハウスの面積が小さいからセルトレイのほうがいい、という場合もあります。
高価な培土を使っているからセルトレイのほうが収支はプラスになる、という場合もあるんです。
一般的に果菜類の育苗はポットが常識だから自分もそうする。
という凝り固まった思考は危険ですよ。

 

事例10:いいものは売れる

イイものさえ作っていれば、それが評価されて売れるんだと思っている農家はけっこう多いです。
これは明確に間違っています。
栽培のことばかりを考えている農家は、商売における大切なポイントを押さえていません。
それは。
商品の価値を決めるのはお客様だということ。
いくら自分自身で素晴らしいものができたと思っていても、それはお客様に評価されてはじめて価値を持ちます。
お客様が「この商品を買いたい」と感じることがなにより大事。
商品の価値はお客様が決めます。
だから、安くても、品質が劣っていても、それに魅力を感じて買ってくれるお客様がいるなら、その商品はイイものだということを知ってください。

マクドナルドのハンバーガーがあれだけ売れているのはなぜですか。
AKB48は楽曲や歌唱力が素晴らしいから、CDが記録的なセールスになっているんですか?

イイものだから売れる、という常識を外し、顧客にとってイイものとは何かを考えることがスタート地点になります。
顧客が満足すれば品質が100点じゃなくてもいい。
その思考から農業経営を組み立てていくと、一般的な農家と同じ働き方になるわけがありませんし、同じような収入にもなりません。

 

非常識は悪いことではありません

長々と書いてきましたが、とにかく大切なことは
常識を疑う
という始まりです。
アマゾンだってグーグルだって、トヨタ自動車だってソフトバンクだって、ほかがやらないことを積み重ねてきたからあれだけ大きく成長してきたんです。
業界の常識に従って、ふつうにやっていたって、周りから抜きん出ることはありません。
周りの水準が低い農業だからこそ、常識を疑い、非常識をうまく取り入れながら、一歩も二歩も前へ進んでいくべきではないでしょうか。


 

 

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