育苗の基本は季節の再現と三点バランス

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野菜やコメなどの栽培において、育苗は欠かせない技術です。
名前のとおり、苗を育てること。
野菜農家であれば、当たり前のように苗を育て、それを畑に植える。
ある意味、常識になっているといってもいい育苗ですが、その本質についてしっかりと考えたことがありますか?

なぜ育苗をするのか?

本当ならやらなくてもいいかもしれない育苗を、もしかしたらやっているのかもしれないんです。
栽培には目的があって、それを達成するために育苗が必要だからやる。
であればいいんですが、
みんなやっているから自分も同じように育苗する。
ではダメです。
まずは育苗の意義について考えて。
必要だと思ったのであれば育苗していきます。

そして。
次に、育苗における基本的な考え方について整理する必要があります。
■培土を使い、●cmの深さで種をまいて、潅水量がどのくらいで、温度管理は▲▲。
これは技術的な話であって、それよりも先に頭に入れておくべき思考があります。
苗づくりに関する書籍をみてもあまり書いていない気がするので、あえて触れてみたいと思います。

小手先のテクニックは別の媒体(書籍、ネット、技術交流会など)に譲りますが、今回は

育苗のベースになる考え方

について詳しく書いていきます。

 

なぜ育苗するのか

なぜ育苗をするのか。
育苗は自分にとって本当に必要なのか。
といった話については、別の記事で詳しく書いているのでそちらをご参照ください。

なぜ?を考える ~育苗をする意味~

広く一般的に知られている情報は、万人に受け入れられるようにマイルドにアレンジされた技術がほとんどです。
家庭菜園で育てるトマトと、専業でやっている農家のトマトが、同じ育て方のわけがありません。
砂混じりで乾きやすい土壌でのトマト栽培と、粘土質で高畝にしないとまともにトマトが育たない環境とで、同じ栽培技術があてはまるわけがありません。
農薬や化学肥料を使った一般的な栽培と、無農薬・無肥料の自然栽培とで、同じ品質の苗が求められるとは思えません。
それぞれの気候環境、栽培条件によって、必要な技術は変わってくるんです。

育苗でもそれは同じ。

だからこそ、なぜ?を追及する必要があります。
自分にとってベストな選択、ベターな選択はどれか。
しっかりと考えて、選んで、採用して。
一般的には「それ非常識でしょ!」と言われるような方法であっても、

自分とっていいと感じるならそれは正解だ!

というくらいの気概を持ってほしいですし、自分に合う技術を模索していってほしいと思います。

 

基本は大切

自分流の栽培を貫く。
それはもちろん大切なことですが、押さえておかなければならない基本もあります。

基本を押さえたうえで、自分なりに応用する。

と表現してもいいかもしれません。

それを押さえておかないと、
トマトの生育適温は20~30度だから、育苗中はその温度帯で管理しよう。
参考書にはそう書いてあったんだから間違いない。
という中途半端な技術になってしまい、中途半端な苗になってしまう可能性があります。

基本は非常に大切なものです。

ただし、意外に書籍には育苗の基本が載ってなかったりします。
培土の選び方、よい苗の姿、温度管理の方法、水やりのコツなど、技術的なことはたくさん書いてあるのに、今一歩踏み込んだ本質的なことが書かれていないように感じます。

トマトの生育適温は20~30度
その温度帯を維持するためにハウスを開け閉めしたり、温床で管理したりする。

それはわかりますが、晴れの日と雨の日とで、同じ温度管理をしてしまっていいのでしょうか。
20度のときと30度のときで、土の水分量は同じでいいのでしょうか。

育苗とは作物をどう育てる行為なのか。
を考えてみると、その本質が見えてきます。

 

作物にとっての快適な気候を再現する

原産地マップ

作物にはそれぞれ、原産地があります。
トマトは南アンデス高地、ニンジンは中央アジア、スイカはアフリカ中部の砂漠地帯、といったように。

それぞれ快適に育ちやすい気候があります。
だから。
育苗では、作物にとっての快適な気候を再現してやることが大切です。

とはいえ。
日本の気候で、海外の特定の地域の気候を再現することは難しいです。
だから、なるべく気候を近づける、というくらいの意識でじゅうぶんだと思います。

たとえば。
トマトにとって快適な気候は、夜間20度~昼間30度という温度帯。
これは日本の気候では7月上旬(愛知県豊田市)に当たります。
だからトマトを栽培していくときに、7月上旬の気候をいかに長く保てるかによって、スムーズに健康的に育てられるかどうかが決まってきます。

じゃあ、育苗するときに気を付けるべきことは
ハウス内に7月上旬の気候を再現すること
だとわかりますよね。

育苗の本質

技術的なことをいえば、ビニールハウスで育苗すると日中の温度は太陽によってグングン上がるので、30度を目標に換気をする。

夜間の温度は太陽熱では補えないので、温床を用意して温度を底上げしてやる。
3月1日に苗を育てるときには、7月1日の気温変化に近づくように温度管理する。
4月1日に苗を育てるときでも、7月1日の気温変化に近づくように温度管理する。
といったように、目標とする気候を再現するために、温度を管理していくんです。

 

水・光・温度の3点バランス

でもここで。
7月上旬がトマトにとって快適な気候とはいえ、晴れの日もあれば雨の日もありますよね。
晴れているときと雨が降っているときの温度管理は同じでいいのか?
疑問が湧いてくるはずです。

もちろん同じでいいはずがありません。
晴れているときの温度管理、水管理。
雨のときの温度管理、水管理。
それぞれ違います。

育苗3点バランス

ごく簡単に言ってしまえば、育苗でおさえなければならないポイントは

水・光・温度のバランスをとる

ということ。
晴れていて、日射が強いときには、温度を高めにして水もたっぷりあげる。
曇りや雨で、日射が弱いときには、温度管理は低めで水も控えめ。
このバランスが非常に重要です。

逆に言うと。
この3点バランスさえ頭に入れておけば、育苗での大きなミスはかなり減ります。
苗がひょろひょろになってしまう、いわゆる徒長はこの3点バランスがくずれることによって起きるからです。
細かな数値管理をしていくと、さらに精度は上がっていきますが、まずは大きなミスをしないという点に留意してもらうと、意外に良い苗が出来上がってくるものです。

 

基本を踏まえて技術をふるう

まとめると。
育苗において大切なことは、

作物にとっての快適な気候をハウスの中に再現する。
水・光・温度の3点バランスに気を付ける。

ということです。
培土をどうするのか、温床環境をどのように整えるのか、潅水設備の充実、ハウス内の湿度管理をどうするか、などなど。
考えるべきことは山のようにありますし、それらが複雑にからみあって育苗を難しくしていますが、とにかく

作物の視点に立って

作物が快適に育つ環境を整えてあげることに全力を注げば、設備や技術が足りなくてもなんとかなるものです。

参考になれば幸いです。

 

 

 

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